創作の原点 《中編》

「原点」。それは物事を考えるときの出発点。
今回は竹馬タケルが物作りをするときのスタート地点を思い出してみるってさ!

はじまりの保育園



    サー:それじゃぁロッキー、まずはタケルの原点となった保育園の空間を再現するよう変身しておくれ。

    ロッキー:任せとけ!


    ウー:次にサーチ、その空間のベストポジションを検索してアタシたちを連れてって。

    サーチ:ワンッ!


    サー:ウーノ、なんだかロッキーが仲間になってますます紹介しやすくなった気がしない?

    ウー:あ、それアタシも思った。性格のわりに気が利くところもあるし、本当に素敵な力を持った不思議なネコよね。

    サー:最後にまた一歩成長できたなんてなんだか皮肉なはなしだなぁ。

  • サーチ:ワウッ!

    ロッキー:そこから見える景色はタケルが小さかった頃、3年間通った保育園跡地

     民家と田んぼに囲まれて、隣にはお寺、もう少し離れた場所にきれいな山がある。
     そんな場所に朝の9時から昼の3時頃までいるのが保育園児の日課だった。


     皮肉なはなしと言えばこれも皮肉なはなしなんだけど、タケルだけ夕方の6時までこの場所に残っていたのよね。


     そう。
     その理由は3時頃になると他のみんなはバンビの絵が描かれたバスに乗って帰っていたんだけど、タケルだけずっと1人で残ることになっていたからなんだよね。


     えぇ、確か家が近いようで遠い場所にあって、仕事帰りのお母さんが自転車で迎えに来るのを待っていたからだったわね。

     今振り返ってみると、あのときみんなと一緒にバスに乗って家まで帰っていれば、タケルは今みたいに1人で物作りをすることが好きな人にはなっていなかったと思うわ。


     昼の3時から夕方の6時までの間にノートに文字を書いたり、絵を描いたり、レゴブロックで遊んだり、テレビで『おかあさんといっしょ』を見たり、保母さんとお話しながらずっと過ごしていたんだ。


     もう8〜9年くらい前に新館が建つことになって旧保育園は取り壊されちゃっているのよね。
     サーチ、なんだか懐かしい気持ちになってきたから敷地の中に連れていって!


  • サーチ:ワウワウッ!

    ロッキー:現在、中はこんな風になっているわけだが、これはこれで嬉しかったんだぜ。

     当時のタケルは思い出の場所が壊されることを悲しんだ。
     保育園が潰れたらアパートかコンビニでもできるんだろうなぁって思っていたらなんと、、、


     、、そこには植樹された木々が埋められていた!

     これにタケルは心底喜んだんだよね。


     えぇ。他にも大切な記憶が関係しているのだけれど、そのとき制作していた詩集のタイトルを『Paradise of Twilight』にしたのもこの経験があったおかげなの。


     そして夕日

     待っていたこの時間、夕方に訪れるいちばん美しい時間。
     部屋の中から外に飛び出してはしゃぎ回っていた時間がこの黄昏時だったんだ。

     このときからタケルにとって夕日はいちばん特別なものになった。
     違った色が解けあって調和された仲良しの時間というか、ちょっぴり悲しいけれど優しい色というか。

     いつもこの夕日だけは目に焼き付けていたよね。


     そうなの。
     この夕日を見ることは『初心に還る』という言葉がいちばんしっくりくる。

     なんかこう、大切なものを失くさずに思い出すために必要なものというか、、、本当に大切なのはその夕日を見た時に美しいと思うことができるような自分のこころ

     今でもそうなのだけど、タケルはきれいな夕焼け空を見るたびに自分の初心を取り戻させてもらっているわ。


     確かなものなどこの世にはないし、
     人は醜い部分をたくさん持っている。

     だけどこの夕日の美しさだけは変わらなかった。

     それと同じようにさ、この世の中にある夕日と同じくらい美しく見えるものを自分のやり方でカタチにしながら守っていこうってこのとき決めたんだよね。


     それから数年後、矢沢宰くんとの出会いによってそれを実現する最適な方法が言葉を綴る詩になった。

     タケルにとっての原点を知る上で重要な手がかりはこれで全部揃ったかしら?


     綴るといえば大切な経験がもうひとつ残っている。

     タケルが得意な四角いカタチのあの文体にまつわるはなしをボクらの最後の仕事にしよう。


     。。。えぇ、、、なんだか涙腺がゆるんできたけど耐えて伝えきってみせるわ。


     泣くのはまだ早いぜ。

     次の準備をして待っているからついて来な!









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