大衆のヌシ


    虚ろな目をして画面を眺め 画像の海へと跳ぶ魚
    絶えず流れる電気の水を 奴らが好んで欲しがる訳は
    その目を泳がす理由を失う渇きを恐れていたからだ

    名もなき身にして仲間を集め 電気の中へと住む魚
    絶えず輝く意識の底を 奴らが嫌って群れなす訳は
    その身を隠せる逃げ場を失う孤独を恐れていたからだ

    だから奴らはその身を束ねて 一つの大魚になっていた
    何千何万集まる魚が 一つに繋がり生まれた体
    現実こいつは社会を変えてく巨大な力をもっていた


    個体が群がる総体からなり 形成されてる集合体
    気体が集まる雲にも見られる 固定のされない流動体
    流行の流れに流され流れて目的さえなく海を泳ぐ

    勢い任せに巨体を揺らせて 誰かに委ねて進路を決めて
    ぴちぴちしている話題に群がり ぱくぱくしながら噂を呼んで
    仲間を増やして体を増やして我が物顔して社会を泳ぐ

    捕まえられない姿に甘えて やりたい放題暴れる魚
    捕まえられても自分じゃなければ 切り捨て散らばる汚い奴ら
    海の秩序を乱したこいつの生態系をここに書こう


    最初にこいつは常識からなる 領域の中に住んでいる
    奴らはその場を動きもしないで 仲間を取りこみ領土を増やし
    そうして自分を正当化できる安全区域を造るもの

    次にこいつは違った形や 色もつ価値もつ魚を嫌う
    おかしな奴だとすぐにも決めつけ 自分の中から仲間をはじき
    そうして自分を優位に立たせて差別でその身を守るもの

    そしてこいつは決して潜らず 思慮なき浅瀬を必ず泳ぐ
    体を増やして虚勢を張るよう 多勢で強さを成そうが同じ
    そうして自分をもてないからこそ他者へと依存し生きるもの


    見えない巨体を社会になびかせ 影しか落とさぬこの魚
    話題を喰らって噂をこぼして 疑惑の糞尿ばかりを生んだ
    自覚をもたない傍観者たちの弱さが生みだすこの輩

    誰にも掴めぬ仇のおまえを ようやくこの目で掴んだ記憶
    言葉を編みこみ捕らえたおまえを 解剖してみて手にした記録
    動機をもたない共犯者たちの新たな姿を探してみせる

    もうこれ以上は逃しはしない なぜならおまえは必要だから
    目的さえなく社会を泳いで 自然と一つにまとまる力が
    今ある以上の未来へ連れてくおまえの姿が見たいから



    【voice】

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