紹介劇『ヴィクトル・ユゴー』 《休憩中》


世界の詩人を紹介するショータイムのコーナー。それが世界詩人劇場(in フランス公演)
人生の次は人間を知るための休憩時間。ノートリー兄妹がユゴーの話題で盛り上がるってさ!

休憩中:『ユゴーは詩人or小説家?』



    ウー:、、、心配だわ。サーぼぉ、ちゃんと生き残っているかしら。あ、もどってきた!かなり全身ボロボロになって帰ってきた!!

    サー:、、、オォ、、シャンゼリィゼェ、、オォ、、シャンゼリィゼェ、、、



    サー:、、キサマぁ、、よくも無実のボクを残して去りやがって!!

    ウー:ごめんなさい!いや、ほら、レミゼだけに人生の無情を思い知らせてやろうかというか女の恨みをここで晴らしてやろうというか、、、

     なんて惨めで不幸なんだ、、、。

     な〜んてね。
     不死鳥だからこんなの痛くもかゆくもな〜い(全回復!


     でた〜!!

     サーぼぉ必殺(生)脅威の再生力!
     フランス入国の際にアタシたち、空軍からのミサイル攻撃を受けたんだけど、全弾直撃でもなんともなかったあの姿を見ているから、あの程度のことは朝飯前よね。



    ウー:ほいじゃぁ今回はどんな休憩時間の過ごし方をしましょうか。亡命気分を満喫しがてら凱旋門の上でランチでもしながらユゴーの話がしたいわ。

    サー:よし、それに決定!

    ウー:ユゴーといえばやっぱりレミゼ。だからまだ知らない人のためにあらすじだけでも伝えておきましょう。ネタバレなしだから安心してね。


     わかった。
     それじゃぁ『レ・ミゼラブル』のあらすじを。

     貼っておこう――

     ――シュバッ!




    【レ・ミゼラブルのあらすじ】

    パンを盗み19年の刑を終えて出獄したジャンは、
    唯一、彼を人間として接してくれた司教の心にふれる。

    貧困を描き、社会の悪を告発し、
    愛と良心に目覚めるジャンの生涯を描く物語。

    各国語に翻訳され、全編に流れる美しくたくましい人類愛は、
    ひろく世界の人々の心に訴えかけ、
    世界文学の古典として愛読されているユゴーの代表作。




    ウー:こんだけ?

    サー:こんだけ。

    ウー:ネタバレ抜きとは言えなんかこう、もうちょっと紹介してもいいんじゃないの。

    サー:フフ。実はもうレ・ミゼラブルの大切なところの紹介はほとんど済ませているから大丈夫なんだよね。

    ウー:ど、どういうことよ。

    サー:今にわかるさ。それよりボクらの主は詩人なんだから、詩人らしい視点でこの大詩人の裏話をしていこうよ!

     あのじいちゃんがエロいことはよくわかったわよ。

     それを補うくらいのあまりある業績を残したこともね。
     だけどなんかピンと来ないのが、やっぱり日本人のワタシたちにはたまに書いた小説の『ノートルダムの鐘』『レ・ミゼラブル』の作者としてしか認知できていないこと。
     このユゴーじいちゃんはこのフランスにおいて一体どんだけスんゴい存在な人なの?


     いい質問だ。

     フランス国民にとって詩人ヴィクトル・ユゴーがどれだけの存在か。今ボクらが座っている凱旋門の真下に柩を置かれ、国葬までされる国民的英雄だということはさっき紹介したね。

     じゃぁ文学的にどれくらいの人物かといったら、
     そうだな、、、。
     今は熱狂的なファンがいない


     うぉ〜いちょっと待ったぁ!

     スゴい人物なのにファンがいないってなぁどういうこったぁ!?


     う〜む。。。ちょっと説明しずらいけど。
     フランスはユゴーに続く超個性的で有名な詩人がたくさんいて楽しい国なんだ。
     ボードレール、ロートレアモン、ヴェルレーヌ、ランボー、マラルメのいた時代なんかは黄金期と言っていい。
     この5人の詩人の方がユゴーよりも個性的で一部の熱心なファンは多いんじゃないかなってボクは思う。


     それじゃぁユゴーは詩人としてはパッとしなかったってこと?


     ううん、そういうわけではない。

     ユゴーの後に生まれた上の天才詩人たちも一度はこう口にしたり思っていたことがある。
     それを言葉を簡単にまとめたら、

    「ユゴー先輩!アンタが何もかも書いちまったせいでオレたち書くことなくなっちまったじゃねぇか!」

    「だからマジで勘弁してくださいよ……」
    っていうような内容の伝記が実際に残されているくらいなんだ。
     つまり、フランス人にとってユゴーは天であり地であり海であり山である存在のような詩人といっても過言ではない。自然に宗教がないように、自然に浸透し過ぎているからこそ熱心なファンがいない状態なんだっていうのがボクの見解。


     あまりに大きすぎてむしろよく見えなくなるタイプの作家というわけなのね。

     決してのめりこむわけではないけれど、
     避けては通れない。
     まさしく巨匠のたたずまい。



    ウー:ところで、レミゼで有名なユゴー自身は小説家としての自分詩人としての自分のどっちを本当の自分だと思っていたのかしら?

    サー:ユゴーは戯曲や小説、評論や旅行記といった幅広いジャンルの文章を数多く残したけれど、彼の本質は詩人なんだ。
     文献を見ても明らかにそう言える。
     それまでの規則に反する発想や日常語を使用して感情を表現し、恋愛や家庭、祖国、自然といったあらゆるものを題材にしながら詩作だけは死ぬまで続けた。

    ウー:舞台や映画化の影響によってレミゼやノートルダムの鐘のことを知っている人は多くいると思うけれど、やっぱり人の心に届けるためにはより適切な媒体(ジャンル)を選んで文章を書くことって大切なのね。

     詩はマイノリティな伝達分野だから詩人が舞台や小説といった色んなジャンルを手掛けようとすることはむしろ自然なことかもしれない。
     詩を書くことはユゴーにとって最もしっくりくるものだった。でもそれだけでは伝えきれないことや認めてもらえないことはどんどん他のやり方で表現しようとすることも大事だと思う。

     だけどどんなジャンルを書いても共通する価値観やテーマが透けて見えてくるところが巨匠たるところ。
     ユゴーは色んなジャンルにわたって創作を行ったけれど、その作品からは常に豊かな想像力や現実の背後にある世界までも見抜こうとする透徹した視線があったように。


     レミゼだけじゃなくて、他のどの作品からも人道主義、民主主義的な立場からの社会に対するメッセージに溢れているものね。

     パワーと一貫性、ロマンとリアリティのバランスがユゴーの魅力だと思うわ。
     政権と闘いながらもちゃんと生活と作品を進めたり、勝てない舞台では引き際をわきまえていたり、引けないところは引かないところからもそうね。
     そういう猛者(おとこ)だったのよ。



    サー:じゃぁ、あとはお待ちかねのレ・ミゼラブルの小ネタでも話そうか。

    ウー:ジュテーム・サーぼぉ!!

休憩中:『レ・ミゼラブルを書いた理由』



    サー:ユゴーが長い歳月をかけて完成させた傑作の小ネタか、、。ネタバレ抜きで話すとしたら何を話そうか、、、。

    ウー:、、そうねぇ。作品を見たり読んだりするときにもっと楽しくなるような話や、理解を深めるための情報なんてどう?

    サー:よっしゃ、それならユゴーがラマルチーヌ宛に書いた手紙の内容が役立ちそうだ!



    【レ・ミゼラブルに関するユゴーの手紙(ラマルチーヌ宛)】

    「みじめな暮らしを認める社会、地獄を認める宗教、戦争を認める人類は、私には下等な社会であり、下等な宗教であり、下等な人類であると思われます。
     私の目指すのは、高い社会、高い人類、高い宗教なのです、すなわち、王のない社会、国境のない人類、経典のない宗教なのです。
    (中略)
     そうです、人間に欲することが許されているかぎり、私は人間の不運をなくそうとし、奴隷を禁じ、みじめな暮らしを追放し、無知を教育し、病気を治療し、暗夜を照らし、憎悪を憎むのです。
     それが私という人間であり、また私が『レ・ミゼラブル』を書いた理由なのです。
     私の考えでは『レ・ミゼラブル』は、ほかならぬ、根底に友愛をもち、頂に進歩をもつものなのです。」




    ウー:この言葉、今の日本人の心に届けてあげたいわ。。。

    サー:あぁ、それを文学で叶えるためにユゴーはレ・ミゼラブルを書いたんだろうね。
     舞台や映画で表現したりそれを見て何かを感じることが今できる大切なことなんだ。

    ウー文学作品はむつかしいとか、わからないとか言って見たり読んだりすることを避けている限り、アタシたち日本人はもうこれ以上良くならないし、変われそうにはないもの。

    サー:そうだね。これは決して「徳の高い」とか「高尚」っていう安っぽい言葉で片付けてはいけないことだ。
     されども言って聞かせるわけにはいかないから作品の普遍性で感じてもらえたらいいね。

     えぇ。
     これはレミゼだけじゃなく、時代や国やジャンルを問わず、文学・芸術作品は本来ヒトのこころに優しい革命をもたらす良き手段であり道具なのだから、そういう気持ちでもっと身近なものになってくれると嬉しいわ。


     とにかくユゴーは自身の経験(激動の時代だった当時のフランス)を通して、『レ・ミゼラブル』の中によく出てくる貧乏人、受刑者、売春婦、浮浪児、乞食、泥棒、下層民、やくざ、私生児を描きながら「闇の世界の住人」を生んだ社会の欠陥と制度の苛酷さを文学によって非難し、攻撃し続けたんだ。

     こ、これは人ごとじゃねぇ!

     これは人ごとじゃねぇぞぉ!!


     その通りなんだ。
     国や状況は違えどレ・ミゼラブルに登場する人物や世界観はやがて訪れる日本の姿であるかもしれない

     そうはならないように作品から何を学んでどういう行動を取るべきかを予習/復習しておくのもより良い鑑賞の秘訣かも。

     文学・芸術作品は、

    「おもしろければそれでよい」
    「売れてお金にならなくてはならない」


     というのが現代人の価値観なんだけど、
     もうそれだけではダメな時代に突入しているからね。

     アンタね、ユゴーがビッグな人物だったからってその流れでビッグな発言してんじゃないわよ。

     文学や芸術こそおもしろけりゃぁそれでいいのよ!
     それよりもっとおもしろそうな話題をよこしやがれ!!


    サー:き、キサマのような野郎が世の中をどんどん……(中略

    ウー:それよりもっとレミゼのことを。。。

    サー:ああもうやめだやめだ!そろそろ休憩時間も終わりだし、劇場に戻る!!

    ウー:そんな〜、ふてくされないでもう少し話しましょうよ〜。


    【アナウンス】
     ご来場のみなさまに申し上げます。

     間もなく第2部の開演となります。
     ご着席になり、しばらくお待ちください。



    サー:フフフ。ボクの怒りのオーラでさっきからお客さんがすっかり黙っちゃってるよ。

    ウー:それはユゴーが登場してくるからみんなそこに注目しているだ、、あ、えぇそうね。

    サー:いいさ。わかっている。人生とはなんて無情なものなんだ(涙目

    ウー:(こりゃアカン。完全にユゴーのパワーにあてられちゃってるわ。。。)

    【開演前ベル】
     ting-ting-ting-ting-ting...

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     ting-ting-ting-ting-ting...








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