タイピング・ダイビング


    スタートまでのカウントダウンがはじまる
    5、4、3、2、1、オフィシャルトップ
    ぼくは海の中へすべり込むように
    ぼくの心の中へと潜り込んでいく――

    ――自分の中心へと伸びる光のガイドロープ
    それだけを頼りに意識は深く、深く
    海のような宇宙に
    自分自身の存在をゆだねながら沈んでいく――

    詩とフリーダイビングはよく似ていると思う
    経験すればするほど奥が深くなる
    深く書けて、深く読んで潜るほど
    大いなるものに包まれているという感覚になる

    ――それを分かち合いたいから潜っている
    孤独に押し潰されそうになる中
    なんでこんなことをやっているのだろう……
    そんな思考すら止まる無意識に落ちていく――

    イルカのように泳ぎたい
    言葉の海に飛び込んだときはよくそう思う
    美しいあの泳ぎ、無駄のないあのフォルム
    あんな美しい、無駄のない文章を目指している

    ――心、透き通れば底は更に深く見える
    それを守り抜くことが何より大切だと思う
    記録への挑戦は底が知れているが
    記憶への挑戦は底知れないグラデーション――

    シェイクスピアは何メートルくらい潜れた?
    ユゴーは? ゲーテは? ダンテは? ホメロスは?
    彼らは伝説のダイバー
    ジャック・マイヨールのような存在だ

    ――世界一深く潜りたい
    世界一美しく泳ぎたい
    これを両立させたような
    自分の文章を完成させたい――

    グラン・ブルー
    あんな世界を描きたい
    見る者を、聞く者を
    あんな神秘的な世界に連れていきたいから

    ――死に向かう詩の海深く
    青い闇の宇宙の中
    タイトルを掴んでターンする
    光射す水面に向かって駆け上がっていく――

    ――いつもの自分に戻ったぼくは
    生きることの意味を空高く掲げ
    今日もこう叫ぶ
    アイムOK
    アイムOK



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