捨て犬と未完コンパスのはなし
ウー:ちょ、ちょっとなによこのイヌ!? サー:わ、わからないけど首輪もないし体も汚れているし。。。きっと捨て犬じゃないのかな。 ウー:とりあえず聞いてみましょう。ねぇワンちゃん、アナタの飼い主はどこ?
クゥ〜〜ン。。。
。。サー帽。この子はきっと飼い主に捨てられちゃったのよ。だって見てよ、毛並みはボロボロだし体もドロドロなのよ。
落ち着くんだウーノ。話はわかるようだからもう少し事情を聞いてみよう。 キミは捨て犬かい? それとも迷子なのかい? ボクらに出来る事があるのなら力になりたいから、キミのやり方で教えてくれないかな。
ワンワン!
ウー:あらヤダ。サー帽のせいでワンちゃんどっかに行っちゃったじゃない。 サー:ボクのせいじゃないさ。捨て犬っぽかったけど、きっと飼い主の元に帰って行ったんだよ。 ウー:そうかしら。そうだったらいいんだけど。いいわ、あのワンちゃんの無事を確認するまで未完コンパスの話の続きでもしましょう。
そうだね。さっき錬金術のデータをもらったけれど石が宝石に変わるような感じ。インターネットと現実とでは言葉の意味や価値の感覚が少し違うことに気付いたタケルはそこんところをオープンにしていこうって思ったわけ。 ようするにさ、自分にとっては石ころのように当たり前だった考え方や感じ方も、違う人から見たらキラッと光るようなモノになるんだってことに気付いたんだって。
ふ〜ん。デモで意思表示をする人にも色んな理由があったのよね。その経験を活かして意思表示の可能性をもっと探っていくのもいいなって思ったのかもしれないわね。
うん。予告も結果も揺るがぬモノ。それって固体に近いものがあるじゃない。だったらさ、今漠然とやっていること(液体)や思っていること(気体)に手を加えていった方が変化の余地があるって思う。 そこんところを自分だけじゃなくって他の人のやっていることや思っていることも加えてさ、かき混ぜながらブレンドしていった方が今の自分にできることの幅が広がったり深まったりするんじゃないのかな。
それって言うのは簡単だけどさ、具体的にどうやればいいのかしら。ってあら? さっきのワンちゃん帰ってきたわ!
イヌ:ハッ ハッ・・・ サー:なにかの紙をくわえている。ちょっと読んでもいいかい? イヌ:ワンッ。 サー:どれどれ、3つの単語が書いてあるぞ。 『保健所』『処分』『ヤダ』 ひょっとしてキミは。。。
。。。わかった。きっと保健所で殺処分にされそうになっていたのよ。 身勝手な飼い主に捨てられたり色んな不幸が重なったり、ペットブームであぶれちゃって保健所行きになっちゃったのね。 まぁ確かに特別カワイイっていうわけでもないし、流行の種類でもないし。どこにでもいる普通のイヌっちゃ〜普通のイヌだけど。 アタシたちは「かわいそう」では済まさないわよ。 ね、サー帽!
あぁ。さっきコンパスの画像を拾ってきてくれたのもキミだろう? だったら借りがあるからね。 ボクらは考えたことや感じたことを話したりすることは得意だけどデータを拾ってくるのは得意じゃない。だからここで文章や画像を探して貼ってくれる仲間が増えることは大歓迎だよ。 だけどそれはボクらが決めることじゃない。この家の家主はタケルだから、タケルに自分の事情を気付いてもらえるようなアピールをして自分の価値を認めてもらわなくてはならないんだ。キミは自分が検索犬として役立てるってことを自分自身で証明できるかい?
ワンッ!
サー:よし、じゃぁ行ってくるんだ。自分の意思を表示するモノを探しておいで! イヌ:ワンワンッ!!
ウー:あの子、大丈夫かしら。 サー:それはわからないけれど、挑戦する価値はあるんじゃないかな。 ウー:あのさ、ひょっとしてさっき言っていたことってこういうことなの? サー:ん〜、まぁそういうことなのかなぁ。。。
この世の中ってさ、見えない空気に支配されているところが大きいじゃない。 それが固まっちゃったら「あれはあぁしなくてはならない」「これはこうしなくてはならない」って考えなくちゃならないような。そうやってなんだか息苦しくなっちゃっているような。 そこをこう。。。なんていうの。上手く言えないんだけど、最初と最後にしか目を付けていないから塞がっているモノゴトの扉をこう、バーッと広げるには過程を見せることが必要だって思ったのよね。
そういうことかもしれないね。 できればそのプロセスの中にさ、自分以外の人の考え方ややり方をブレンドする余白や隙のようなものがあったらもっとよくなるだろうね。 そのためにはどうしたらいいかなんてわかんないんだけどこんなふうに意思を表示するのも意味と価値があるんじゃない。インターネットの世界ならなおさらって思うよ。
あのワンちゃんもどうなるかわかんないんだけど、チャレンジしないことにはなにもはじまらないもの。 たとえ失敗したっていつか他の誰かが拾ってくれるかもしれないようにね、人の考えや行動も誰かや何かを通していつかどこかで伝わるかもしれないから。まずは自分がやらなくちゃ。
そんなこんなの方針をなんやかんやで決めていく。そのプロセスをオープンする。まずはそこから。 ほんと、あの子と同じような状況だよ。ウーノ、後ろをごらん。あの子が何かをくわえて帰ってきたよ。
ワンッ!
これは。。なにかの絵のようだけど見覚えがあるわ。 アーカイバーのアタシたちにはわかる。これはタケルが中学生のときに見た映画に感動を受けて描いた油絵ね。
【ショーシャンクの空に】 1994年(日本公開1995年)・アメリカ この映画はアンディーが冤罪により逮捕され、終身刑の判決を受けて収監されたショーシャンク刑務所から脱獄するまでが主なストーリーとなっています。 そうだったね。ワンちゃん、これがキミの意思表示かい? 保健所から脱走して、また新しい希望を探しているってことなのかい?
ワンッ!
ウー:前向きな子は好きよ。そうと決まれば話は早いわ。あとはその気持ちをタケルに伝えにいくの。さぁ、行きなさい! イヌ:ワンワンッ!!
ウー:行っけぇ〜! サー:ふ〜。あとはタケル次第か。あの子はこれからボクらの仲間になれるのかな。 ウー:なるわよ。だってさ、あのワンちゃんすっごい気が利くがんばり屋さんじゃない? サー:あぁ。見た目は良くないし、中身も普通のイヌかもしれない。だけどその事情や自分の良さをアピールすればまた新しい目で見直してくれるかもしれないからね。
畑とか耕している人が近くにいるからわかるんだけどさ。例えカタチが悪くてもおいしく食べられる野菜や果物っていっぱいあるじゃない。それなのにさ、見た目がどうだの基準がこうだのって言われて捨てられるのもいっぱいあるのよね。 アタシ思うもん。食べられるなら食べてほしいなって。
うん、それは人に関しても言えることだよね。そんなことで使いモノにならないような目で見たり見られたり。 そういう色眼鏡ってなんかいろんな命をもったいなくしているように思う。そこんところも具体性やプロセスを可視化することによって再評価されたり変わっていけたらいいなって思うよ。
ウー:ようするに未完コンパスってそういうことなのよね。 サー:そういうこと。それをまずは個人の範囲内で実験してみようっていうこと。 ウー:いや〜、上手に社会に適応できてない人の半分が言うとこう、染みるものがありますな〜。 サー:ウーノ。。キミもその半分だってことを忘れないでほしいねぇ。。。 ウー:ハァ〜、あぁ、まぁそうっちゃそうだけどなんかムカつくわ! サー:ふ〜ん、まともに画像も拾ってこれない右脳鳥にそんなことを言われてもねぇ〜。 ウー:あぁ〜ったまキタわ!
サー:#$%$%&!! ウー:#$%$%&!!
それから30分後
サー:はぁ。はぁ。。やっぱり二人だけで話し合うっていうのはケンカになることもあるからさ。。。 ウー:。。。あのワンちゃんにはぜひともこの家に住んでほしいわね。ハァ。ハァ。。 サー:んっ、とかやりあっていた間にあの子が戻ってきた! ウー:あら。なんだかさっきよりキレイになって帰ってきたわ。。。
ワンワン!!
おかえりなさい。 あらあら、体を洗ってもらってスカーフまで巻いちゃって。 ちゃんと見たらイケてるワンちゃんじゃない! それでそれで、結果はどうだったの? くわえたその紙を見せてちょうだい。
こ、これはタケル直筆の命名文! サーチ。 キミの名前はサーチ!! サーチ、よかったね。キミはボクらと一つ屋根の下で暮らしていくことを認めてもらえたんだね。
大歓迎よ! 今までは不幸だったかもしれないけど、これから『幸(さち)』になるからサーチ。 いい名前よね。サー帽。。。
いやいや、これは検索犬だから『検索(search)』っていう意味で付けられた名前でしょ。勘違いしないでほしいなぁ。
ウー:ハァ〜。ちょっとそれありえないんですけど〜! サー:どう考えたってそういう意味でしょ!? ウー:それじゃぁさ、ここはひとつサーチ自身に聞いてみようじゃないの。 サー:あぁ、そうしよう。サーチ、キミはタケルからどっちの意味を込めて名前を付けられたのかな。ボクかウーノか―― 双子:――どっち!?
ワンッ! (両者とも甲乙付けがたいくらい美味しそうな鳥だと思うっス!)
サー:そういやボクたち、イヌ語ってわかんなかったんだね。 ウー:そうだったわね。世の中知らなきゃよかったってこともあるからそれはそれでいいのかもね。 サー:それじゃぁ、これから手探りしながら自分の目線をオープンしていこうか。 ウー:えぇ。カワいくて頼もしい探し屋さんの仲間も増えたことだし。ねっ―― 双子:――サーチ!
ワンッ!