詩人のこころ


    人は誰しも心の中に 詩人を棲ませて生きている
    けれどもそれは月日と共に自然と別れを告げるもの

    聖なる区域は儚さ故に 社会の仕組みに耐えられず
    無垢なる鳥もやがては絶えて真理の歌すら聴けずに終わる

    汚れなければ生きられないと 誰しもわたしの命を脅すが
    この地を失い生きてくことなどどうしてわたしにできようか?


    未来を見れば見つめるほどに 失くせば何かに打ちひしがれて
    過去を見つめる自分を想い絶滅種である心を守る

    されど閉ざした今のままでは 生きてはゆけぬとそれも知り
    自然に殉じた動きもとれずに現実とやらに打ちひしがれる

    素直に感じる翼を千切り 詩魂の衣を捨て去り堕ちて
    ただ生きただ死に消えてゆくことなどどうしてわたしにできようか?


    この身に棲ませる詩人を殺し 夢を吐き捨て理想に背けば
    生きることなど実に容易くあらゆる痛みも忘れるだろう

    それと同時に言葉の風や ひらめき降らせる光も止んで
    わたしは飛べずにただ泣き続け、枯れた泉で死ぬことだろう

    だからわたしはわたしの為に 幼き詩人を生かして綴り
    わたしはわたしで居たいが故に自由に憧れ歌うのだろう


    そして白紙の命をまとい 韻の鼓動の流れを感じ
    墨の血筋を通わせ描き詩の羽織り成し羽ばたきながら

    まだ見ぬ言葉を降らせて渡り 重ねた羽毛で皆誰しもが
    素敵な夢を見られるようにその日が来るまで世界を翔ける

    だからわたしは心の中に 詩人を棲ませて生きていく
    わたしが描いた雲路がやがて空を希望で満たすまで



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